タイラー・コーエンの「大停滞」、「インセンティブ」、「創造的破壊」、「フレーミング」

土日でタイラー・コーエンの「大停滞」、「インセンティブ」、「創造的破壊」、「フレーミング」に目を通す。
ゲーム理論について基礎を勉強。

「大停滞」は、1980年代移行で賃金は上がっていないし、インターネット以外の目新しい技術革新は無いという前提で、そのことを実証的に数値を上げて書いている。政府が税金として徴収できる「刈り取れる果実」が無くなってきている。
ネットは構造的な変容に関係しているので、参加したもの参加していないものの差が激しくなるという今まで語られてきた意見も。このネットの技術革新が、恩恵をもたらす反面、大きな収入をもたらさないことも指摘。この傾向は、「フリー」のクリス・アンダーソンまで行き、企業にとって収益の上げ方が変わる。ネットの登場で家電など価格競争にさらされるのは当然で、商品のライフサイクルも短くなり売れる商品と売れない商品の二極化が進み、社会全体にデフレ圧力が高まるのは必然であり、大量生産大量消費型のマーケットからユーザーオリエンテッドなマーケットに構造変容するのは仕方ないこと。
最後は、イノベーションをもたらす科学者の地位向上を図れ、というところで結ばれている。レオナルド・ダヴィンチは、芸術家として有名だが科学者としての側面が軽んじられているとも。
昔、ゼロサムという言葉が流行ったが、これは市場経済がゼロサム成長であるとは言い切れないので、今は語られない。ゼロサムがパイの食い合いを重商主義とセットで語られていることが多いということを若田部さんの著作でキーワードとして語れていることで学ぶ。

「インセンティブ」実に豊富な例が紹介されている。以下、目次:「内なるエコノミスト」の声がもたらすインセンティブ、実際のお金、ビジネス文化、芸術作品と自己愛、自分に有利になるようなシグナリングとその心理のケース紹介、自己欺瞞の欠点と美徳を支える点、とにかく美味しく食べる極めつけの極意で自分に有利な方向に変える例、七つの大罪(傲慢、強欲、放蕩のちの色欲、嫉妬、暴食、憤怒、怠惰、クリスマスプレゼントは世界を救うだろうか=他人を助けるための助言)、内なるエコノミストとわれらの文明の未来。インセンティブの心理的要素を豊富な例で紹介。)

「創造的破壊」
シュンペーターのキーワードを、コーエンが現代で文化を中心に検証。グローバリズムが逆に文化の多様性を生み出しているという説を貿易利益モデルから紹介。「文化の同一化と差異化は同時に起こることが多い。」「多用性とは、集団を互いに孤立させる機能ではなく、集団同士を互いに結びつける関係である。(クロード・レヴィストロース)」「異文化間交易は、それぞれの社会を改変し崩壊させるが、結局はイノベーションを支え、人間の創造力を持続させることになる」。またエートスの脆弱性と諸問題として異文化交易を検証。ミネルヴァモデルとして交易がエートスを壊滅させるより先にエートスの創造的成果を流通させること。多様性のパラドックスつまり多様性という価値観の受容を拒む社会があったほうが世界の多様性が進むというGは苦節の紹介。アメリカの文化帝国主義について。最小公分母効果は、異文化交易の結果生まれる多様性として、つまり万人に向けた製品は逆に衆愚化するため、文化はおのずとこの分母を守ろうとする。国民文化は重要なのか、など。
日本への序文が付いている。震災後、日本人の創造力がきっと日本を立ち直らせるという応援メッセージ。確かに日本の持つ異文化を受容して創造する力は非常に高いことが知られているし、日本人の変わり方そのものは変わらないいうこの強さを失ったとき、日本は本当にヤバイとなる。

ゲーム理論については、経済でも政治でも参考になる。経済ではインセンティブがゲーム理論に関係するのだろう。
ゲーム理論入門という下記の紹介が参考になった。
http://ha1.seikyou.ne.jp/home/yus/ecolab/game.html
非協力ゲーム理論の無限回数型については、国際政治での適用が語られるだろう。尖閣をめぐる対立は、ゲーム理論的に言えば、中国のためにも日本のためにもならなかったはず。日本も中国側を読み誤まり損をした。損を得にしているとすれば日本の企業が、この対立が続かないことを読み、無償で車を修理したりしていること。この判断は先を読んでいる。
韓国については、ハンの思想を知る必要があるだろう。韓国は自殺率が非常に高く、高麗大学のアンケートで再び生まれるとしたら韓国に生まれたいか?という質問の答えが、なんと5割しかなかったことは知っておくべきだろう。ゲーム理論で複雑化したときの集合的考え方は専門領域に入るので、今後。

あと行きつけのスパに行ってスチームサウナに入り、DVDを4本見て週末はおしまい。ショーシャンクの空の下で、を再度観る。脚本が優れている。脱出テーマは、いつ観ても引き込まれる。