薦められてリサ・ランドール著「ワープする宇宙」を読む。
私たちは三次元+時間の1次元の四次元に住んでいるが、この四次元は、5次元の断面でしかないという余剰次元理論を可能性を解りやすく紹介してくれている。
特殊相対性理論、一般相対性理論から始まり、量子論も数十頁で、内容の濃い紹介をしてくれているので、余剰次元の理論を組み立てるに至る前提理論を踏まえることができる。
巧みな比喩で理解させてくれる能力は、文学にも造詣が深いことを想像させるが、生活の中から拾い出してくる身近な例で理解させてしまうスピード感に溢れていて、読者に理解の達成感を与えている。
例えば、対称性の破れについての比喩。
丸いディナーテーブルで皆が席に着いており、水が置いてあるとする。右にある水を取るか、左にある水を取るかで、全員の取り方が決まる。はじめに水を取ったときに対称性の破れが起こる。というように解りやすい。
今話題のヒッグス機構についても、この本を読むと、この不思議な粒子の位置付けがわかる。
この人は最も深いところでワクワク感があるのだろう。宇宙の謎解きに恋をしている波動が伝わってくる。
そして、宇宙物理学を語りながらも人柄が見えてくる。例えば余剰次元の共同研究者であるラマン・サンドラムがいるのだが、彼女は、常にラマンと私は、と共同研究者の先に記している。本質的なことしか研究しないラマンがその研究姿勢で博士課程を4期経ながらも、なかなか上の職に上れなかったことを彼女は心配しており、くじけそうになる彼を励ます話は、心根の優しさを窺い知ることができる。
そういう周囲のハーモニーとチームワークを作りながら、ワクワク恋の一直線で余剰次元の可能性を解き明かしていく明晰さは、宇宙との相思相愛から生まれる集中とエネルギーに満ちている。相思相愛だから向こうから扉を開いてくれる。
私たちは、宇宙の中の地球の上で生きながらも、宇宙について、まだ殆ど解らないでいる。
4次元が、余剰次元と交流しているとしたら、一体それはどういうことなのか?
はたまた、何故、宇宙は膨張しているのか?
何故、銀河の渦巻きと巻貝の渦、台風の渦巻きなど自然に存在する渦巻きは同じフィボナッチ係数となるのか?
五感と物質的意識に縛られているのだろうか?
本来人間の精神はもっと自由な存在であったのではないだろうか?
人間は今までに作り上げてきたものに縛られて生きていることは確かだろう。日常と物質がすべてだと意識するとバベルの塔さながらに、まずは自然の法則から逸脱し、ひいては宇宙の法則から逸脱していっていると考える方が外していないと思われる。
恋は彼方へ向かわせる。
人間を超えたもの、それは、宇宙でもあり、自然でもあり、神でもあり、神々でもありる。
古代においては、相思相愛が断ち切られたときに生じるエネルギーの消失から畏敬する心が生まれたのだろう。
この本は、面白い。